テディーボーイ・ブルース

tat__tat2009-04-25

石野 陽子 歌:昭和60年 4月発売:(徳間ジャパン 7JAS−28)
             売野 雅勇 作詞:芹澤 廣明 作曲


気がつけば桜が咲き、葉桜に変化していました。
すっかり寡作になってしまいましたが、私は相変わらずノラリクラリやっております。


さてさて今回はガラッと変わって昭和の終わりころ、です。
今では芸名を“平仮名”にした彼女の画期的なデビュー曲でした。


何が画期的なのか、と言うといわゆるセガの「アーケード版」ゲームとタイアップし、ゲームの
主題歌のような売り方をしたことです。
ゲームの内容は、マシンガンを撃ちながら敵を蹴飛ばしていく−−−普通は撃たれた敵は“消える”
のですがここでは小さくなるだけ。そして一定時間のうちに蹴飛ばして「消す」という流れでした。


ある程度ステージをクリアすると彼女の部屋(もちろんゲームの中のお話ですが)をのぞける、という
ボーナスステージがあったのですが、アイドルの部屋に灰皿があったり、とよくワカラン内容では
ありました。


ゲーム中BGMではなく彼女の歌声が流れる、というのも画期的でした(まあ、タイアップなんである
意味当たり前かも)。


曲の方は哀愁感の強いなんとなくチェッカーズの初期を連想しましたが詞・曲の組み合わせが同じ。
それなりにまとまってはいますが、「ああやっぱりな」、という感じです。
結局大きなヒットには恵まれずにアイドル街道を駆け抜けた姉と違ってバラエティ路線でその姿をよく見ました。

アリューシャンの春

tat__tat2009-02-26

立花 ひろし 歌:昭和18年 6月発売:(富士音盤 と 306)
            松村 又一 作詞:島田 逸平 作曲


もう年が明けて2か月も経ってしまいました…
とにかく今年は暖冬で特に先月は平均気温の記録を塗り替えたらしいですね。
このまま“春”モード突入でしょうか。


いやいや花粉でお悩みの方にはつらい季節到来
(とっくに花粉、舞ってますが・・・・)、、、、


この歌はキング時代の立花ひろしの曲として最も良く知られているものです。
♪春とは言えど名ばかりの・・・・

このオリジナル盤は面白いカップリングとなっていてこの片面は
「南国の馬車」(小堺淑:作詞/上原げんと:作曲/宮城しのぶ:歌)、つまり季節で
言うと初春と初夏、場所で言うと北方と南方というわけで『一ツブで二度オイシイ』
カップリングだと言えます。(ぃゃ、、言えるか??)


曲の方は2・3番の間奏で『何故か』東京ラプソディーが顔を出す(いいのか?)
ユニークなアレンジが施されています。アリューシャン列島と言えば、戦後一貫して
叫ばれている、いわゆる“北方領土”問題がでてくるのですが、こういった問題は
二国間で歴史上のどのタイミングに基準を置くかで価値観など変わりますから非常に
厄介な問題でしょうね。


我が国が訴えている4島返還にしても相手側が「もともと自分のもの」と解釈すれば
それまでですからね。某首相がヘンな妥協案など口走らないことを祈りたいです。


ところで一番詞の終わりに出てくる「ロッペン鳥」はカラフトウミガラスのことで、すでに
絶滅したと聞きます。時として歌詞の中にこう言った記録も残されているのですね。

東京パソドブル

tat__tat2009-01-13

津村 謙・菊地 章子 歌:昭和21年 7月発売:(コロムビア A 102)
         サトウ ハチロー 作詞:江口 夜詩 作曲


しばらく間があいてしまいましたが“復活”します(何回目、だ・・・・)。


終戦間もなくの一枚。菊池章子は戦後の一時期「地」の字を使ってました。


テイチクから移籍してきた津村謙とのデュエットで、彼は翌年キングへ、戦前のデビュー以来
コロムビアにいた菊池章子もテイチクへ移籍してしまう寸前の“すれ違い”で生まれたこの顔合
わせは恐らくこの一曲のみ、というある意味貴重な一枚と言えます
(ウラ・オモテでそれぞれ歌っているものはある)。


各主要都市は米軍の空襲によって“焼け野原”となっていて、歌詞にあるような窓に灯がともる
状態ではなかったのですがこの年(昭和21年)の多くの曲がそうであるように詞・曲とも
「明るさ・希望」をモチーフにしていて焦土と化した帝都の復興讃歌となっています。


江口夜詩の曲も特にこのあたり工夫したあとが見られ、とにかく疲弊した大衆の心を癒そうとした
詞曲は今聴いてもそれなりに聴き応えのある一曲になっているというのは言い過ぎでしょうか・・・・

サーカスの唄

tat__tat2008-11-07

松平 晃 歌:昭和8年 3月発売:(コロムビア 27353)
          西条 八十 作詞:古賀 政男 作曲


朝晩の冷え込みも厳しくなり周りには咳き込んでいる人も見かける季節になりました。
深まりゆく秋とともに聞きたくなるのがこの歌、というわけ。


曲調から受ける私のイメージとしては晩秋なのですが、このレコードは3月に発売されています。
昭和8年、ドイツのハーゲンベックサーカスが来日するにあたり歓迎の意をこめて作られたのが
片面の「来る来るサーカス(歌:淡谷のり子)」でこちらは地方回りの曲馬団の哀愁を歌っています。


ただネットを検索してもほとんどのサイトが「『サーカスの唄』がハーゲンベックサーカスの
歓迎曲である」旨の記述で正直「ぉぃぉぃ」ってところですが・・・・


ところでこの曲は西条八十古賀政男コンビの第一号作品で作曲者自身詞稿を受け取った時
感動し夜が明けるまで曲想を練った、というのは有名な話ですね。


のちEP時代になって小林旭が日活映画「さすらい」の主題歌として、北原謙二が作曲者自伝を
TVドラマ化した時の主題歌「あの夢この歌」のB面曲としてそれぞれレコード化しています。
オリジナルSP盤はこの曲のヒットによりAB面が逆転した、とあるのですが歌詞カードも「サーカスの唄」が
A面扱いになっていてカードまで差し替えたとは思えないのですが真相は如何に・・・・・・
ここにあるレコードはこの曲がA面になっていますから(逆転が本当だとしたら)“逆転”した後の
後期の盤、ということになります。


ちなみに片面の「来る来るサーカス」は古賀メロレコード一号となった「文のかおり」(歌:佐藤千夜子
と同じメロディ。このサーカスの唄も昭和11年に「あの娘たずねて」(歌:桂三千夫)として
“化けて”います


(曲馬団=サーカス)の図式が出来上がるのはこの曲のヒット以後のことだということは間違いないと思います。

悲しみの敵

tat__tat2008-10-26

藤山 一郎 歌:昭和 9年 4月発売:(ビクター 53086)
            伊東 ハンニ 作詞:増永 丈夫 作曲


サブプライムローンに端を発した株価の暴落。戦後の金融恐慌だ、とマスコミも
報じて久しいですね。
9.11テロ直後以来の協調介入など金融情勢もあわただしいですが先行き見えない
動向に気をもまれている人も多いのではないでしょうか。


この曲は昭和の初め、満州事変をバックに巨額を手に入れ“昭和の天一坊”と呼ば
れた伊東ハンニが作詞したものです。
彼はいわゆる相場師で名の由来は「伊勢から立身して東京と大阪に二股をかける男」
というダジャレでした。


タイトルは彼が掲げたスローガンからきています。
概して大金を一度に手に入れた人が起こす行動はしばしば破天荒であり、また奇想天外
であったりするのですが彼もまた同じであったようです。


B面曲は「オシャカサン」で私はこの世に降臨したオシャカサンだと“自画自賛”して
います。誰か止めろよ・・・・(って今さら遅いですが)
曲の方はハンニと交友のあった藤山一郎自身が作曲しています。行進曲調の“いかにも”
という感じの曲です。


結局ハンニ自身は米相場に手を出したのが失敗の手始めで最終的には「詐欺師」の
レッテルを貼られ戦後その消息を断ってしまいました。
まぁ地道にコツコツ生きていくのが一番良かったりするのです、ね。
(・・・・と自分を慰めてみたりする。。。)

星空のマサチューセッツ

tat__tat2008-10-04

ザ・マイクス 歌:昭和42年12月発売:(フィリップス FS−1031)
            なかにし 礼 訳詞:Robin Gibb 作曲


ここ数日特に朝夕は冷え込んで夜風が肌にしむ季節になりましたね。
秋の夜長にはピッタリの曲だと思います。


先に「バラが咲いた(昭和41年)」のヒットがあるマイク真木がヴォーカル、また
この後「みんな夢の中(昭和44年)」を歌った高田恭子も参加していたザ・マイクス
の曲としてもっとも知られているものです。
もとはビージーズのヒット曲のカバーでした(写真右)。


当時歌謡界のニューウェーブとしてGSとフォークソングといった2つの流れがありました
が、この曲は「GS」として分類されていたようです。
(今から思えばかなりフォーク寄りではありますが・・・)


恋人の住むマサチューセッツに星空を仰ぎながら思いを馳せる・・・・
なかにし礼が訳詞をつけていますがなかなかこの曲にピッタリのイメージですね。

十五夜お月さん

tat__tat2008-09-03

平井 英子 歌:昭和 7年 9月発売:(ビクター 52370)
            野口 雨情 作詞:本居 長世 作曲


流行歌オンリーじゃなかったのか、というのが聞こえてきそうですが
今回は少し趣向を変えて“童謡”です。
一度は耳にし口にしたことのある曲ですね。


当時童謡系のレコードは伴奏がピアノだけ、というのが主流だったのですが
このレコードではマンドリンを主体としたアンサンブルでそこへハーモニカが
絡む、といったなかなか洒落たアレンジが施されています。


妹が里子に出され、母はいない・・・・
童謡にしばしばみられる「残酷系」の歌詞です。“一家離散”を歌っているわけ
ですが平井英子がけなげに歌っているせいか気が付きにくいかも知れません。


昭和初期世界恐慌に端を発した不況と冷害による不作で特に東北地方の農村部は
悲惨な状況でした。一家バラバラになる、というのも極端な例ではなかったようです。
まだまだ都市部と地方の格差は大きかった時代でした。


ところでまだまだ残暑厳しいといえど夜はコオロギの音とともに確実に秋がやってきています。
今年の中秋の名月は14日。時代変われど夜空のお月さんは不変ですね。(当たり前か・・・・)