ふるさとの馬車

tat__tat2007-09-18

藤山 一郎 歌:昭和21年11月発売:(コロムビア A−169)
            藤浦 洸 作詞:江口 夜詩 作曲

戦後スグに出たいわゆる馬車ものです。戦前のそれと異なり、(大陸が
使えなくなって)日本国内を舞台に“走って”います。


西部劇などでおなじみの馬車ですが、これは舞台が大陸だから絵になるのであって
“島国”の日本では一種の憧憬でしかなかったと思いますね。実際観光用として存在
するものを除けば我が国で馬車というものが実用になったことはありません
(明治初期あるにはありましたが・・)。


昭和初期いわゆる大陸ものがジャンルとして確立する嚆矢となったのが「馬車もの」と
呼ばれる一連の流行歌でした。
ほとんどのメーカーがこの題材を扱った歌を各社のカラーを活かしつつ出しています。
敗戦後はしばらく“舞台”としての大陸が使用できなくなりましたが国内を舞台に馬車は
走るのでした。


この曲では場所は特定していませんがトコトコと時を忘れてノンビリ走るふるさとの馬車・・・
「国敗れて山河あり」を象徴するような詞が印象的です。


そしてその後行き場を失った馬車は昭和27年の「あこがれの郵便馬車」のような特例を
除けばこの曲のくどいイントロが象徴するように迷走したあげく戦後復興と引き替えるか
のように“スピード時代”について行けず闇の中へと消えていったのでした・・・・。